2017-06-24 Sat
今回用いた抽出の手順は非常にシンプル。(参考資料はこちら:山野井貴浩氏による)食塩水、台所用洗剤、冷エタノールという最小アイテムで
すりつぶす、まぜる、エタ沈、のカンタン手数です。
エタノールは500mL数百円の消毒用(IP配合のもの)で十分。
岡田先生は、魚屋さんに「廃棄する白子をとっておいて」と頼んで、
無料で分けてもらう、という方法で入手、材料費もかかっていません。
紹介していただいた魚の精巣を用いた方法の他に、
冷凍庫に眠っていたブタレバー、牛レバー
気になっていた「バナナの果肉」(ラップに包んでつぶす)
自分の「口腔粘膜上皮」(抽出方法はこちら)
なども、抽出とジフェニルアミン試薬での確認を試してみました。
また、コントロールをどのように設定して納得できる実験にするのか、
という検討をするため、DNAそのもの(試薬として購入したもの)
を水に溶かし、呈色を確認しました。
さらに、岡田先生から、
「コントロールとして紹介されている核酸サプリの錠剤には、
他の成分も含まれているのでは」という生徒の疑問に答えたい、
ジフェニルアミンがそもそも糖の検出に使われる試薬で、
サプリの成分表には「デンプン」「セルロース」の表示もあることから、
確認してみたい、ということで、
「グルコース」「デンプン」を水に溶いたものも呈色を見てみました。
結果はこの写真です。
グルコースやデンプンによる呈色と、DNAによる呈色は色調が違うので、
DNA溶液の呈色と同様の色になっているのを見ることで、
より納得しやすいのではないか、
DNA溶液の濃い青い液を酢酸で希釈して、比色用の試験管を並べておくと
わかりやすいのではないか、といった意見が出ていました。
濃度によって色の濃さがはっきりと変わるので、
収量が少ないときは、溶かす水と加える試薬の量を減らせばよい、と、
スモールスケールでの実施も試みました。
しかし、口腔粘膜上皮はまだまだ色が薄い(水と比べると青いが)ので、
さらに液量を減らす方向で検討が必要です。
バナナ果肉のモヤモヤ、見事にアウトです。
DNAが入ってないとは言わないけれど、やはり少なくとも
「手軽に抽出」という方法に「適切な材料」とは言いがたい結果でした。
もちろん、この問題(2015センター生物基礎)の正答はあきらかで、
正答以外の材料はいずれもDNAを含んでいて、ちゃんと抽出すればできる、
ということで、どこにも「手軽な方法」なんてことは書いてないのでいいのですが。
参考:バナナ果肉については
・日本農芸化学会の資料
・神奈川大学 日野晶也氏 による検討
などを比較してみてください。
フワフワと出てくる糸状のDNAをガラス棒に巻き付けて回収する
そんな、実験書に一行カンタンに書いてある操作ひとつにしても、
ベテランと若手では経験の差が出ます。
なぜ、そのように操作すると上手くいくのか(いかないのか)
教員が集まり、一緒にやることで学ぶことは、実験内容のことだけではない、
と、改めて強く実感する会になりました。
岡田健司先生、どうもありがとうございました。
再掲:参考Webページ
*抽出物がDNAであることを確かめる対照実験を伴う検証の必要性
谷津潤・山野井貴浩 理科教育学研究57(1),63-70.(2016)
*抽出物はDNAであるかを確かめる(高校生向け)
Takahiro YAMANOI HP
*Youtube DNA抽出とジフェニルアミンによる確認実験
*生物学実験 / DNAの抽出と同定
慶応義塾大学日吉キャンパス 特色GP 文系学生への実験を重視した自然科学教育
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2017-06-20 Tue
2017年6月23日(金) @須磨東高校 生物教室 18:30~20:30 テーマ:「DNAの抽出と検証」
エントリー状況 5名 のお申し込みをいただきました。
今回また、初参加の方をお迎えできるのを、とてもうれしく思います。
今さら、入りにくいなあ、と思わず、いつでも、どのタイミングからでも、
久しぶりでも、どうぞ、ご参加ください。
とりあえずは、お知らせメールの登録(下記)をしていただければ、
このブログの更新を連絡します。
今回は新しい実践にチャレンジしてみた先生が、その取り組みを紹介する機会として、
例会を開きます。
公開授業や、生物部会支部の研修会など、オフィシャルな場で、となると、
準備も何かと大変ですが、ここでは、気楽に、柔軟に紹介できます。
さらに、自分ひとりで予備実験しようとしても、なかなか試してみることのできないアレコレを、
集まった先生方でどんどんやってみることも可能です。
実験研修の場としてEveLaboに参加するだけでなく、
みんなでやってみたいこと、共有したいこと、の「店開き」をする場として、
例会を使ってもらえたら、さらにさらにうれしいです。
みんなでやってみたいことがある、試し実験をしてみたい、
そんなことも、下記のフォームから何でもお寄せください。
*例会開催について
本ブログの更新をした場合にお知らせするメールをご希望の方は、
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お知らせメール申込み メールフォーム
(本ブログの更新を知らせるメールを希望する場合はこちらから。
ここから例会の参加申込みはできません。)
*例会のテーマや開催のリクエスト・ご意見を受け付けます。
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(例会でこんなことがやってみたいです、は、こちらから。
ここから例会の参加申込みはできません。)
2017-06-05 Mon
JT生命誌研究館の橋本主税先生よりミニシンポジウムのお知らせをいただきました。
ミニシンポジウム「形づくりと細胞周期の関係」を考えてみましょう
2017年7月15日(土) 13:00〜16:30 @生命誌研究館
「発生過程で必然的に起こる細胞分裂が、ただ細胞の数を増やすだけの意味しか持たないのか、それとも発生や形づくりの過程に本質的な意味を持ちうるのかについて考えたいのです。」
(フライヤーの文面より抜粋)
チラシの吹き出しには「増えるか、変わるか、それが問題だ!」とあります。
私たちが、授業をするとき、分化誘導をする、という文脈での説明が主となり、
分化誘導を受ける側の話は、
例えばニワトリの肢と翼の表皮と真皮のはり替え実験などで、
「誘導に反応する準備ができているかどうか、あるいは、その能力が失われていないか」
を見る、といった外側からの説明をする程度になっています。
誘導を受けるかどうか、それは受け手の細胞側の何の違いに依るのか、
そこは、上手くサラッと逃げて、触れずに進んでいきます。
また、「細胞の分化」では、
「分化するときには細胞周期から外れ(細胞分裂をやめて)特定の形やはたらきを持つようになる」
と、当然のような顔をしてやっていたりします。
でも、「増えるか、変わるか、それが問題だ!」と
少しこだわって、先生方のお話を聞いて考えてみる。
授業のニュアンスが変わるきっかけになりそうです。
次回6月23日(金)の第18回例会 「DNAの抽出と検証」
お申し込みを受付中です。→こちら